マッサン Love(ラブ)がみんなを救う!
2015.1.19

渡る世間に鬼はなし、のサブタイトル(第14週分)とは少し阿漕に過ぎたかな、とも思います、ハイ(他局絡みですが)。


さて、やっとのことで鴨居商店の社員となり、本格的なウイスキー製造に着手することとなったマッサン(玉山鉄二)。良妻・エリー(シャーロット・K・フォックス)のご懐妊が発覚し、公私ともに順風満帆かと思われました。が、鴨居(堤真一)の息子・英一郎(浅香航大)を預かることとなり、面倒ごとを避けられそうにありません。案の定、父との関係に悩む英一郎は、マッサンを含めた周囲のひとびととの関わりで常に壁を置き、余計な誤解を生んでしまいます。それでも、英一郎の本質を見抜いていたエリーは、優しく厳しく彼に接することで、徐々に頑なだった青年の心を和らげてゆきます。英一郎もエリーのなかに亡き母の面影を見て、自らの行いを改めようとするのです。


余談ですが、英一郎役の浅香航大さん。最初観たとき、またハンサムボーイ(死語?)の新キャラか! と思う一方でどこかで……という印象が強かったのです。調べてみるとナルホド、「明日の光をつかめ -2013夏-(制作:東海テレビ)」に出演(佐々木仁役)されていたのですね。過去に問題を抱えながらも前に進もうとする青年を好演されていて、同じような経歴でトラブルを抱えた「たんぽぽ農園」OBとの遣り取りでは感動をいただきました。今回は生真面目なエリート青年役ですが、とても好感が持てます。マッサンにとって生涯のライバルとも呼べる鴨居の一粒種ですから、今後の活躍も期待されます(後継は確定でしょう)。


閑話休題、この11〜15週は前6〜10週に比べ精神的に辛く重いエピソードが多く、それでいてどこか淡々とした流れを感じました。他方、英一郎という新キャラの登場で別の視点を持たせ、マッサンとエリーのあいだに流れる深い愛情とふたりに関わるひとびととの交歓をよりクローズアップしていたかと。特に、キャサリンの何気ないひと言に不安を覚えるエリーを、大きな「Love」で包み込むマッサンの姿には胸を打たれました。身近に同じような経験をした方がいたので、余計に感情移入してしまいました。

流産という重い事実、同時に二度と子供の産めない身体であることの宣告、理想とするウイスキー造りができない現実、そして母親の死。それらを経て、「みんなに美味いと言ってもらえるウイスキー」を造るという新たな目標を掲げたマッサンでしたが、本質であるはずのがむしゃらさをしまい込んだことで、心と身体のバランスを崩してしまいます。

自分が造りたかったウイスキーがどんなものだったか、わからなくなってしまったと泣きじゃくるマッサン。それはウイスキーが造りたくても造れず、職を転々としながら腐りかけていたころの彼とはまるで異なる、産みの苦しみにさいなまれた結果の姿でした。それだけに、エリーとしてもこれ以上彼の苦痛を見るに堪えかね、鴨居商店を辞めることを提案します。


理想と現実、追究と妥協、職人と経営者。11〜15週を通して、特に後半はこれらの対照性が顕著でした。それはマッサンと鴨居という終生のライバル関係を通してより引き立てられているように感じます。


「イチバン厳しいときに、おまえは鴨居を捨てるんか」


「無理や。おまえは経営者にはなられへん」


鴨居商店を辞するというマッサンに対して、鴨居は辛辣な言葉を投げつけます。同時に、いまは無理でも、いつか必ず理想のウイスキーを造れる時期が来る、と思い留まらせようともします。「日本ではじめての国産ウイスキーを造る」という信念のもと、パートナーとして選んだ男が独立し、敵(かたき)となる。とても複雑な胸裡が、堤さんの演技にあらわれていました。 最終的に、マッサンの考えが変わらないことを確認したあとの鴨居は、やはり男前でしたね。無理矢理土下座をさせて、経営者として必要なことを伝えようとし、不足している資金をその場で餞として手渡す。さらにエリーに対しては、いついかなるときも味方であると告げての熱い抱擁。まさに鴨井欣次郎のハイライトでした(英一郎との和解シーンも感動的でした)。

もうひとつ、「経営者」についての解釈。鴨居が語るなかの、会社は商品で客をよろこばせ、それで得た儲けで社員を幸せにするという一説です。どれだけ個人でがんばっても、知恵が足らず力が足らずということが必ず起こる。そこで各人の力を結集し、より良いものを生み出す。充分にペイできれば、それを均等に分配して個人の財産とする。かつての創業者経営者とよばれる御歴々に共通している考え方と言えますね。健全な「人間の営み」はこういうところから生まれると思います。


マッサンの夫としての、エリーの妻としての、早苗の母としての、鴨居の同志としての「Love」がふんだんに詰まった週でした。

さあ、マッサンもいよいよ折り返し地点をターンしました(30週予定)。北海道は余市に赴き、自分が理想とするウイスキー造りへ邁進できるのか。「客に媚びてまでウイスキーを造りとうない」と、ふたたび猪突猛進のマッサン復活か。個人的にはエマちゃん(住田萌乃)の成長も気になる今日このごろです(笑)。